瓦屋根の魅力

美しさ、涼しさ、静けさ──瓦屋根が叶える、上質な住まい。
瓦屋根は、日本の風土に寄り添い、千年の時を超えて愛されてきた屋根材です。どっしりとした重厚感と和の美しさは、家の佇まいに格別の品格を与えます。夏は強い日差しを遮り、冬は寒さをやわらげる断熱性。台風や強風にもびくともしない耐久性。そして雨音さえ静かに包みこむ、穏やかな暮らし。近年は軽量化や耐震性にも優れた瓦が登場し、従来の課題も大きく改善されています。
「せっかく葺き替えるなら、やっぱり瓦で」。そんな方にこそ、今の瓦をご覧いただきたいのです。
瓦が選ばれる5つの理由
- ① 快適な住み心地を実現する優れた性能
断熱性・遮熱性で一年中快適
- 粘土瓦の厚みと空気層が外気温の影響を遮断し、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を維持
- 表面温度の上昇を抑え、エアコン効率を向上させて光熱費を削減
静寂な住環境を提供する防音性
- 雨音や外部騒音を大幅に軽減し、家族の安らぎの時間を守る
- 瓦の重量と密度が音の侵入を効果的にブロック
自然の力を活かした防露性
- 瓦の下に形成される通気層が湿気を自然に排出
- 結露やカビの発生を防ぎ、健康的な住環境を実現
- ② 時を超えて愛される美しさと風格
重厚感あふれる佇まい
- 日本の伝統美を継承した格調高いデザインが住まいに風格を与える
- 時間の経過とともに増す味わい深い表情で、住まいの価値を高める
環境と調和する自然な美しさ
- 四季の移ろいに溶け込む落ち着いた色合いと質感
- 和風・洋風を問わず、あらゆる建築スタイルに調和する多彩なデザイン
感性に響く詫び寂びの美学
- 職人の技が織りなす一枚一枚の個性が、唯一無二の屋根景観を創出
- 歳月を重ねるほどに深まる風情で、住まいに物語を刻む
- ③ 長期にわたる安心のメンテナンス性
圧倒的な耐久性
- 1,000年以上の歴史が実証する驚異的な耐久性能
- 適切な施工により50年以上の長期使用が可能
経済的なランニングコスト
- 再塗装が不要で、長期的なメンテナンス費用を大幅に削減
- 部分修理が可能なため、全面改修の必要性が少ない
修理・交換がしやすい高いメンテナンス性
- 一枚単位での交換が可能で、局所的な損傷にも迅速に対応
- 豊富な補修材料により、将来のメンテナンスも安心
- ④ 家族を守る確かな安全性能
台風や強風に負けない耐風圧性
- 重量による優れた耐風圧性能で、飛散リスクを最小限に抑制
- ガイドライン工法または緊結工法により、瓦一枚一枚をしっかりと固定
万一の火災から住まいを守る防火性能
- 不燃材料として認定された高い防火性能
- 隣家からの延焼を防ぎ、家族の安全を確保
対震性と防水性の両立
- 現代の耐震工法により軽量化を実現しながら、優れた防水性を維持
- 1,000年の歴史が証明する信頼性で、災害に強い住まいを実現
- ⑤ 地球環境にやさしい持続可能な屋根材
100%自然素材の安心
- 粘土という天然素材のみを使用し、有害物質を一切含まない
- 人と環境に優しい、次世代に継承できる安全な建材
完全リサイクル可能な循環型素材
- 使用後は粉砕して土に還すことができる究極のエコ建材
- 廃棄時の環境負荷がほぼゼロの持続可能な選択
長寿命による環境貢献
- 50年以上の耐久性により、建材の製造・廃棄サイクルを大幅に削減
- CO₂排出量の抑制に貢献し、地球温暖化防止に寄与
屋根の素材の性能比較
各屋根材の素材の性能を◎「とても高い」、○「高い」、△「中程度」、×「低い」の4段階で比較しました。
個別の製品についてはそれぞれ特徴ある商品開発をしているため、一概に表わすのは難しい。また建物全体として考えた場合も見方が違ってきます。あくまで素材の特性とお考えください。
例えば、ガルバリウム鋼板屋根材の中には断熱性・省エネ性・防露性を高めるために断熱材を付加したものがあります。また瓦の耐震性能×というのは重さのためですが、建物全体では屋根の重さに耐える柱や壁を用いるため一概に低いとは言えません。

屋根は軽い方がいいって本当?
- 建築基準法では「重い建物」「軽い建物」それぞれの重さに応じて設計されているため、完成した家の耐震性は同じです。
- 重い建物は柱や筋交い、壁などが多く、丈夫に設計されるので、建物全体の耐用年数が長くなるとも考えられます。
- その重さにより耐震性の問題を指摘されてきた瓦ですが、2022年1月1日に新築時や増築時の瓦屋根の工事基準としてガイドライン工法が法制化され、瓦の緊結方法や釘の本数、種類などの最低基準が義務付けられました。これにより瓦屋根の耐震性能や耐風性能が大幅に強化されています。
- あなたの家が新耐震基準(1981年)以降の建物で瓦葺きの屋根なら、葺き替えの際に、重さは気にせず瓦を選ぶことができます。
- もともと化粧スレート葺きやガルバリウム鋼板葺きの「軽い建物」では、葺き替え時に瓦を選ぶことはできません。
1950年 | 建築基準法制定 | 【旧耐震基準】地震力を水平震度0.2に引上げ。木造は床面積に応じた壁量規定を導入(壁の量を定めた)。 |
1981年 | 建築基準法改正 | 【新耐震基準】倒壊など防止性能を確認する構造計算の追加。壁量規定・必要壁長さ・軸組の種類・倍率が改定。 |
2000年 | 建築基準法改正 | 構造計算では確認できない性能項目を明確化、「限界耐力計算法」も導入。木造住宅は筋交いを金物固定、地耐力に応じた基礎設計や偏りの少ない耐力壁配置が義務化。 |
瓦屋根工事
瓦屋根の葺き替え工事

「古い瓦屋根に不安を感じているが末永く家を維持したい」このような方には瓦の葺き替えがおすすめです。
最新の瓦は高精度で軽量化されており、施工方法も進化しています。もともと高い耐久性と防水性もさらに向上しています。葺き替え後は、少なくとも30~40年以上の耐用年数が見込めます。
瓦屋根の葺き替え工事の工程
瓦桟木を用いる「引っ掛け桟工法」で瓦屋根を葺きます。瓦屋根工事の工程と工事に係るおおよその日数です。工事にかかる日数は全体で2週間から1か月程度ですが、屋根の大きさや形状により大きく変わるので参考とお考えください。
外部足場掛け工事は、余程の荒天を除き雨天でも行います。屋根工事では、足場以外の工事は雨天休工となります。
天候と相談しながら、屋根の大きさや形状を考え、絶対に雨漏りしないよう工事を行います。天候や他工事との兼ね合いで、足場工事から日程が空く場合があります。
下葺材の上に桟瓦の働き長さ寸法で割り付け、墨打ちを行い桟木を留付けます。荷揚げ機を使い瓦を屋根上に運びます。留付けた桟木に瓦を引っ掛け、釘で瓦を固定します。瓦は下部の軒先から上部の棟へと順に葺いていきます。平部、袖部を葺き、最後に棟部を葺き、面戸を漆喰で仕上げます。
屋根材の形状が変わると雨樋への雨水の流れが変わります。雨樋に水がうまく落ちないときは、雨樋の調整が必要です。
最後に足場を解体して工事完了です。
下葺材
建物は瓦と下葺材の2重の防水で雨水から守られています。下葺材は、瓦の下に侵入した水を内部へ侵入させないよう軒先まで流しきります。最終的に水の侵入を防いでいるのは下葺材です。下葺材は年数が経つと柔軟性が失われ破れやすくなります。下葺材が破れると雨漏りの原因となります。
下葺材の下地への固定方法は2種類。ステーブル留めと粘着タイプです。瓦屋根にはステーブル留めを使用します。下葺材は屋根材下に位置するため、下葺材のみを交換することはできません。瓦は非常に耐久性の高い屋根材なので、下葺材も高耐久なものを使用します。
以前は薄く削った杉などをロール巻きしたこけら板が主流でしたが、今はアスファルトルーフィングや合成高分子系ルーフィングなどが使用されています。
- 改質アスファルトルーフィング(ゴムアスルーフィング)
基材の原紙や不織布に、合成ゴムや合成樹脂を混合した改質アスファルトを使用したルーフィングで、高い防水性と耐久性が特徴です。
主な製品:
ニューライナールーフィング/田島ルーフィング
などニューライナールーフィング - 非アスファルト系ルーフィング
自己止水機能を持つ特殊ポリマーを使用したルーフラミテクトシリーズがあります。透湿防止フィルムにより小屋裏の結露を防ぎます。さらに遮熱性を高めて商品もあります。
主な製品:
ルーフラミテクトRX/セーレン
などルーフラミテクトRX
換気棟

上階の室温上昇の抑制と結露防止に必須。温度が高い空気ほど上に行くので、棟上に換気棟を設けることにより熱くなった空気が外部に排出される。瓦用の換気棟は、冠瓦を取り付ける前に下部へ設けるため、完成後外からは確認できません。
棟瓦積み替え工事

棟瓦のズレや歪みは、雨漏りの原因となります。棟瓦積み替え工事では、既存の瓦を取り外し、真っすぐに積み直します。瓦の状態に応じて、新しい瓦を使用するか、古い瓦を再利用します。
棟瓦・土居のし瓦面戸漆喰塗り替え工事

棟瓦と土居のし瓦の漆喰面戸は、経年によりひび割れや剥がれが生じます。放置すると雨漏りの原因となるため、漆喰の塗り替えをおすすめします。既存の漆喰及び土を取り除き、新たに南蛮漆喰で固定し、表面を漆喰で仕上げます。
瓦屋根修理工事
瓦の割れ、欠け、ズレの修理工事

割れた和形瓦、S形瓦は差し替えての交換が可能です。F形などデザインに特徴がある瓦は、在庫や中古を探す必要があります。またひび割れや割れた欠片が残っていれば、シリコンコーキングなどで接着も可能です。ズレた瓦は元の状態に修正し、シリコンコーキングの点付けで再度ズレないよう固定します。
雨漏り修理工事

瓦屋根の雨漏りで多いケースに、銅板製の本谷板金の穴があります。板金の周辺の瓦と板金を取り外し、耐久性の高いステンレス製の本谷板金に交換します。本谷の他に、棟や捨谷などが雨漏りの可能性が高い場所です。
雨漏りの原因はケースバイケースで、屋根が原因とも限りません。サッシ周りやサイディング壁の目地や継ぎ目などからの可能性もあります。雨漏り修理は、雨漏りの可能性の高い場所から順に修理し、可能性を一つずつ原因を潰していきます。
瓦の種類
瓦を材質で分けると粘土瓦、プレスセメント瓦があります。
粘土瓦には製法で分けるといぶし瓦、釉薬瓦、無釉薬瓦の3種類があります。また形状により、J形瓦(和形)、S形瓦(洋形)、F形瓦(平板)、本葺き形瓦などがあります。ここでは住宅に使われることのない本葺き形瓦を除いた3種について見ていきます。またJ形瓦(和形)には、大きさの違いによる分類があります。主な産地は愛知県三河地方(三州瓦)、島根県(石州瓦)、兵庫県淡路島(淡路瓦)。その歴史は、古代オリエント地方からと思われていますが、古代中国の周時代(紀元前900~800年ごろ)に使われていたことが分かっています。日本では、崇峻天皇元年(588年)に朝鮮半島から4名の瓦博士によって伝えられたと日本書紀に記されています。
プレスセメント瓦はモルタルを型に入れてプレスし固め、表面に塗装をしたものです。粘土瓦に比べて重量があり、メンテナンス性や耐久性に劣ります。過去に多く使われていたため修理が発生することがありますが、すでに販売中止となっていて差し替えることができない場合が多いです。中古品やリバイバル品が手に入るものもありますが、市場に出回る数は少ないです。劣化が激しい場合は、下葺材の寿命もあるので、葺き替え工事をおすすめします。
製法による分類
粘土瓦は焼成法や彩色の方法により、いぶし瓦、釉薬瓦、無ゆう瓦に区分されます。平部に用いる桟瓦について、色と形状を見てきましょう。
いぶし瓦

いぶし銀の色の瓦。製造の焼成の最終段階で多量の炭化水素を含むガスを一時的に発生させ、瓦を燻化させて銀灰色に仕上げたもの。形状はほぼ全てJ形(和形)瓦や本葺瓦で、和風建築には時代を問わずマッチする。
釉薬瓦

焼成する前の乾燥させた瓦の上に釉薬を施し、様々な色に仕上げた瓦。J形(和形)、S形(洋形)、F形(平板)などほぼ全ての形状がある。塩を利用した珪酸カルシウムのガラス状の赤い皮膜を持つ塩焼瓦も釉薬瓦の一種とされる。
無ゆう瓦

粘土をそのまま素焼きした赤瓦のこと。明治・大正の頃には大量に使われていた。近年、顔料を混ぜたり還元反応で発色させたりした瓦で窯変瓦として出回っている瓦があり、大きく分類するとこれも無ゆう瓦といえる。
形状による分類
J形瓦(和形瓦)
桟瓦葺きとよばれ、瓦の左右に桟の重なりをもち、上下に切り込みのある形状の瓦をいう。いぶし瓦では、切れ込みの深さ(中深・両二寸など)や先端部の形状(削/切落)など細かい部分の形状の違いで、地域に適した機能性を高めたり外観のこだわりを表現することもできる。軒瓦、袖瓦、角瓦、のし瓦、冠瓦、雪止め瓦、鬼瓦などの役物瓦があり、こちらも多種多様で個性的なセンスを表現することも可能。
大きさによる分類
桟瓦を基準として1坪(3.3㎡)の使用枚数により、四九判(49枚/坪)、五三判、五六判、六十判、六四判、七二判、八十判、百枚判、百二十枚判などに分類される。関東地方では主に三州瓦が使用され、三州瓦では一般に53Aという規格が採用されている。53Aの桟瓦の働き寸法(瓦が重なり合っていない露出している部分の寸法)は縦235㎜×横265㎜。
S形瓦(洋形瓦)
明治時代初期に欧米諸国からもたらされたスパニッシュ瓦を改良して一体化させた瓦。洋風な建物にマッチする。
F形瓦(平板瓦)
フランス瓦が起源。瓦製造メーカーそれぞれに特性のある形状が開発されてきた。葺き替え工事では、J形(和形)瓦より施工性が高く工事費が安価になることにより、J形(和形)瓦からの葺き替えで多く使われる。
Uタイプ

左右の重なり部分に膨らみを持つタイプ。真ん中の平らな部分に水はけを良くする形状で機能性を高めたり、独自の個性的なデザインを持たせたものもある。
Fタイプ

葺きあがりがほぼ平な仕上がりとなります。葺き上がりは直線的でシャープなデザイン。
Mタイプ

低い波状の断面を持ちます。葺き上がりはS形瓦に近いイメージとなります。