
化粧スレートは、薄型・軽量な屋根材として広く使用されています。セメントと繊維を混合して作られた人工屋根材です。天然スレート(石板)の風合いを模倣しつつ、コストや施工性を向上。さまざまな住宅スタイルに対応します。現在はケイミュー株式会社のみが生産しています。
化粧スレートの8つの特徴
- 軽量性…瓦に比べて非常に軽量。陶器瓦の約1/2。
- コストパフォーマンス…コストが比較的安価な屋根材の一つ。材料費と施工費を抑えられるため、リーズナブルに施工できるのがメリット。コスト重視の選択肢として人気があります。
- 防火性…セメントが主な材料であるため、火に強く、燃えにくい。
- 耐久性…適切なメンテナンスを行えば耐久性がある屋根材。ただし瓦や金属屋根などに比べるとやや劣る。
- 色褪せや苔の発生…経年劣化によって色褪せや苔の発生が起こりやすい点がデメリット。
- 遮音性…比較的薄い材料のため、断熱性や遮音性がやや低いのが欠点。
- 断熱性…薄いため夏場は屋根の温度が上昇しやすく、室内の温度にも影響があります。換気棟の取付をおすすめします。また暑さが気になる人は、遮熱性の高い製品を選ぶこともできます。
- 防露性…下葺材との間に空気層がなく通気性が低いため防露性は悪い。
化粧スレート屋根の工事
屋根修理工事
ここでは化粧スレート屋根で多く発生する修理工事を2つお伝えします。
棟包板金工事
棟包板金は、大棟や隅棟の左右の屋根面が交わる頂上部をカバーする板金です。外れると雨漏りする恐れがあります。外れたときは棟下地板と棟包板金を交換します。台風の被害が非常に多い部位です。
化粧スレート差し替え工事
スレーターズリッパーという道具を使います。化粧スレートの隙間にスレーターズリッパーを差し込み、化粧スレートを固定する釘を断ち切ります。釘を切断後に化粧スレートを引き抜きます。引き抜き後に新たな化粧スレートを差し込みます。再度釘で固定することはできないため、接着剤などで固定します。
注意点は、化粧スレート葺き後年数が経つと裏面が下葺材に張り付いてしまい、差し替え工事の際に下葺材を破く恐れがあること。このリスクはあらかじめ確認ができません。屋根の止水は最終的に下葺材にかかっています。下葺材が破れると雨漏りの恐れがあることを、差し替え工事ではあらかじめご理解いただきます。
屋根材葺き替え工事

こんなときは屋根材の葺き替え工事が必要かもしれません。
- 屋根を葺いてから数十年経ち雨漏りが発生した
- 化粧スレートにひび割れが多く発生し始めた
- 屋根に苔がひどく色落ちが激しい、
外部足場工事~屋根材解体工事及び廃材処分
外部足場掛け工事は、余程の荒天を除き雨天でも行うため、基本的に工事予定日どおり実施します。屋根工事に伴う足場以外の工事は雨天休工となります。なお天候や他工事との兼ね合いにより、足場工事と屋根材解体工事の間に空白期間がある場合があります。
屋根材の解体撤去後、廃材を処分します。屋根材のアスベスト(石綿)有無により処分費用が変わります。アスベストの有無は、建築時期、設計図書、建材の種類、専門家による調査により判断します。建築時期は、2006年9月1日以降に建築された建物にはアスベスト含有建材の使用が原則禁止のため、検査済証の日付で判断できます。
野地板
屋根面は上から屋根材、下葺材、野地板で構成されます。野地板には小幅板や構造用合板を用います。化粧スレート屋根には一般的に厚さ12㎜の構造用合板を用います。下葺材が劣化して防水性を損なうと、野地板は雨水や結露などにより劣化します。酷いときは小屋組みの構造材を傷めることもあります。屋根葺き替え工事の際には、次のような対応をします。

- 既存屋根材撤去時に劣化損傷が判明。
- 部分的な傷みであれば、損傷部の張替えで対応。
- 大部分が傷んでいる場合は、構造用合板の重ね張り(増張り)。
- 見積り時に別途費用として、屋根材撤去後に判明する最悪のケース(全面の構造用合板増張り)をあらかじめ提示しておくケースも。
下葺材
屋根は屋根材と下葺材の2重の防水で建物を水から守っています。下葺材は、屋根材下に発生した水を内部へ侵入させないよう軒先まで流しきります。最終的に水の侵入を防いでいるのが下葺材です。
下葺材は経年により柔軟性が失われ破れやすくなります。下葺材が破れると雨漏りの原因となります。下葺材の柔軟性を損なうまでの耐久期間により汎用品、高耐久品からハイエンドまで多種あります。
下葺材の下地への固定方法は2種類。ステーブル留めと粘着タイプです。弊社では一般的にはステーブル留めを、3.0/10勾配以下の緩勾配屋根には粘着タイプを使用します。
下葺材は屋根材下に位置するため、下葺材のみを交換することはできません。下葺材が汎用的なものでは、屋根材の耐久性を十分発揮できないことがあります。
- アスファルトルーフィング
基材の原紙にアスファルトを浸透・被覆し、表裏面に鉱物質粉末を付着させたもの。汎用の下葺材。JIS規格アスファルトルーフィング940適合品。
主な製品:
Pカラー/田島ルーフィングPカラー - 改質アスファルトルーフィング(ゴムアスルーフィング)
基材の原紙や不織布に、合成ゴムや合成樹脂を混合した改質アスファルトを使用したルーフィング。粘着層付タイプもある。
主な製品:
ニューライナールーフィング(高耐久)
タディスセルフ(遅延粘着)
タディスホワイト(高温時作業性)
アンダーガムロン(緩勾配用)
など/田島ルーフィングニューライナールーフィング
化粧スレート葺き工事
- 役物板金の素材
ステンレス製リング釘で下地に固定します。
- ガルバリウム鋼板製板金…一般的
- ステンレス鋼板製板金…海の近くでは、より錆に強いステンレス鋼板製を用いる
- 化粧スレート葺き
ケイミュー社製。グランネクスとカラーベストの2シリーズ展開。
コロニアルグラッサ グランネクスト…高級グレード。高い意匠性。
- Uroko(ウロコ)
- Hishi(ヒシ)
- Sand(サンド)
- Simple(シンプル)
カラーベスト…ベーシックなロングセラーデザイン。
- レイシャスグラッサ
- グラッサ600
- コロニアル遮熱グラッサ
- コロニアルグラッサ
- コロニアルクアッド
野地板(構造用合板)への固定方法の違い。
- 亜鉛メッキ釘…一般的
- ステンレス釘…海の近くの防錆対策
- ステンレス釘+裏面接着剤…海の近くで暴風の当たる場所の防錆+耐風圧対策
- 役物板金の納まり
大棟(水平の棟)の板金仕様
- 棟包仕様…一般的な納まり。ほぼ一択。
- 特殊な仕様…シンプル納まり、スマート役物納まり、フリーリッジ納まり
隅棟(斜めの棟)の板金仕様
- 棟包仕様…標準的な納まり。下地板への固定方法は、一般的にステンレス製リング釘を用い、耐風圧を気にするときはステンレスビスを用います。
- 差棟仕様…隅コーナー(ケイミューカタログ)とも呼ぶ。棟包より意匠性の高い仕様。
- 特殊な仕様…シンプル納まり、スマート役物納まり、フリーリッジ納まり。
換気棟

上階の室温上昇の抑制と結露防止に必須。温度が高い空気ほど上に行くので、棟上に換気棟を設けることにより熱くなった空気が外部に排出される。室温上昇に対しより効果的な工法として、野地板二重張りにし通気層を設けた熱シャット工法も可能。
換気棟は一般的にはガルバリウム鋼板製の製品を用いるが、屋根形状により付けられない場合もある。また海が近い場合はステンレス鋼板製の製品を用いることもあります。
雪止め金具
- 落雪防止
- 雪の負荷による雨樋の損傷防止
- 全面、北面のみ、2階大屋根のみなど、設置位置を指定することも可能
人気の化粧スレート屋根材3種類
- コロニアルグラッサ
- 表面塗装が30年経っても色落ちしない色10年保証のグラッサコート仕上
- 古くなった化粧スレートからの葺き替えの人
- 他の屋根材からの葺き替えにもおすすめのオールラウンダー
- コロニアル遮熱グラッサ
- 表面塗装が30年経っても色落ちしない色10年保証のグラッサコート仕上(遮熱)
- コロニアルグラッサに比べ、小屋裏温度がマイナス3℃~12℃(色による)
- 今の屋根材で室内温度が気になる人
- 瓦からの葺き替えで室温上昇が心配な人
- コロニアルクアッド
- 表面塗装はアクリルコート仕上
- 少しでも安価に工事を行いたい人
- 見た目のメンテナンスを気にかけない人